“なぎさホテル ” |
なぎさホテル
伊集院 静
小学館
幻想的で本当にあった事なのか、不思議です。
いかにも伊集院 静 らしい自伝的随想です。
ノスタルジックな写真や装丁が素敵です
東京で挫折し、故郷に帰るに帰れず、
なにげなく立ち寄った逗子の “なぎさホテル ”。
このホテルと、一人の支配人との出逢いが
伊集院 静 のその後の人生を変えてしまいます。
ホテル代も払えない若者が7年も同じホテルに
逗留出来るって、ありえません。
作家デビューのきっかけや、大人の男として歩み出す背景が描かれています。
本文より
ホテルは宿泊の部屋が本館で20部屋あっただろうか、とても小さなホテルで、部屋にバスルーム、トイレがない部屋が大半だった。そのかわり共同で使うバスルームは広くて洒落ていた。
私はここでホテルが客に何を提供するのかを学んだ。
それは、ゲストの人生のひとときをいかに快適に過ごしてもらうか、という哲学である。
私はこのホテルで大人の男へのさまざまなことを学んだ。人生は哀しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことばかりではないということである。
荒らしの海を見せられても必ずいつかホテルの部屋の窓にまぶしい陽射しが差しはじめることだ
このホテルは、今でも私の夢の中に生き続けているホテルだ。
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