#340 ラブ・レター |
小島信夫
夏葉社
これもまた、夏葉社の本です。
カバーを外すとほら、この通り。
紙の本へのこだわりを感じます。
芥川賞作家の小島信夫さんの
なんといっていいか・・・、
地味な短編集です。
「アイコさん、お元気ですか」
「あなた、ダァレ」
「あなたのノブオさんですよ」
「コジマ・ノブオ、つまりあなたの夫ですよ」
「あなたのイトシイ人ですよ」
「アラ久しぶり、あなた、今までどこにいたの」
「この近くにいて、度々あらわれます」
「こんどはしばらくこなかったわねぇ」
「いろいろの都合でね」
あなた、今までどこにいたのー『ラブ・レター』に寄せて 堀江敏幸 より
同じように
2年前、92歳で亡くなられた
たつのの詩人 金田弘さんの老老介護のご様子が目に浮かび、
胸が痛みました
彼も読者も、一行前の記憶を着々と失い、一行先の行方をついに知らされぬまま、
なお晴れやかに生き抜くことが許されるのである。